ビジネスバッグにおいて、最も必要とされる性能のひとつとして「自立する」があります。
その、根本とも言えるニーズにしっかりと応えるべく、開発のコンセプトも至極シンプルに「自立するビジネスバッグ」でした。
鞄づくりの定石として自立させるテクニックは幾つかありますが、当然の事ながら全てやり尽くされており、どれも新鮮味は感じられません。
見た目にも斬新さがあって性能も満たす「新しいデザイン」を探して考え抜いた結果、思わぬところでヒントを見つけました。
china建築です。
china建築は柱や梁で支える線構造をしており、特に旧来の「真壁構造」では構造体である柱を見せることにより、機能美をシンプルに表現しています。
この機能美を鞄に取り入れたらどうだろうか。
鞄の四隅に柱を入れて、ビジネスバッグに多く求められる「自立する」性能を満たしながら、真壁構造に習って柱を見せる設計で、その機能美を象徴的にデザインしました。
このデザインを実現するために試作段階では今までとは違う実験的な方法で縫製していましたが、それでは生産工程で安定した製造を実現できないと判断し、改めて商品化のために柱になる芯材やその縫い込み方を幾つもの試作を繰り返して検討し、ついに新しい縫製方法をつくりあげることができました。
当社は「鞄は道具」であることを信条としています。
この「ピラー」シリーズの開発で、道具としての使いやすさを追求すると共に、道具であるからこその美しさをつくりあげることにも注意深く配慮するということを学べました。